146人が本棚に入れています
本棚に追加
その中で、いや、もしかしたらキッカケは別にあるのかもしれないが、ともかくカイさんがまだ『特定』を作っていない限り、こうして誰かを想うようになっても、おかしくはなかった。
(わかってた、つもりだったんだけど)
実際直面してみると、案外しんどい。
「……この間は、ありがとうございました」
「えっ?」
カイさんが顔を跳ね上げる。
「由実ちゃん、喜んでくれてました。これなら学校でも使えるって、写真、送ってくれたりして。カイさんのアドバイスのお陰です」
突然話題を変えて微笑む俺に、カイさんは戸惑いながら言う。
「……喜んでくれたのなら、よかった。でも、選んだのは、ユウちゃんだし」
「いえ、僕ひとりじゃ、きっと失敗していましたから」
カイさんの想う相手は、どんな人なのだろう。
背が高くて知的な男性だろうか、色気たっぷりの女性だろうか。
少なくとも、俺には無いモノを持つ人なのだろう。
心臓がツクリツクリとないている。
悔しいのか、悲しいのか。
俺にはこの痛みの理由は、わからない。
「……だからこれは、お礼も兼ねての誕生日プレゼントです」
鞄から取り出した小型の紙袋から、青いリボンのついた小箱を取り出しカイさんの目の前に置く。
カイさんはこれまでで一番じゃないか、というくらい、いつもは涼やかな目元を見開いて、笑顔を浮かべる俺の顔と小箱を交互に見遣った。
最初のコメントを投稿しよう!