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「迷惑、でした?」
こんな物言いが出来るのは、痛む胸中とは反対に脳が冷えきっているからだろう。
諦めにも似た感覚。
カイさんはビクリと肩を跳ね上げると、あからさまに狼狽える。
「め、いわく、じゃないけど……」
「なら、貰ってやってください。その後は、お任せしますから」
処分してくれたって構わないんだ。
そんな意図を含めた揶揄に、カイさんは気づいたのだろうか。
やはり視線を宙に彷徨わせ、キツく眉根を寄せると、細い指先をそっと伸ばし小箱に触れた。
「……開けてもいい?」
「どうぞ」
箱を覆っていたリボンが丁寧に解かれていく。
大切な壊れ物を扱うような手つきに、俺は思わず苦笑した。
そんなに怯えなくても。
ぱかりと上蓋が開かれ、その中から更に一回り小さな小箱が出てくる。
取り出し、机上に置いたカイさんが、ゆっくりと上蓋を開いた。
カイさんが息をつめる。
ピタリと止まった指先。
「っ、これ」
「見た時、カイさんの姿が浮かんで。ピッタリだなって思ったんです。凛としてて、でも優雅さもあって。そう思ったら、つい」
「っ」
「なのでこれは僕からの善意の押し付けです。この場だけでいいんで、笑顔で受け取ってやってください。……カイさんなら、出来るでしょう?」
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