カワイイ俺のカワイイ贈り物

22/23

146人が本棚に入れています
本棚に追加
/238ページ
演技で構わないから、受け取って欲しかった。 自身の胸中に押し込めていた感情を、重ねていたのかもしれない。 どうか戻ってこないで。 祈りにも似た心持ちで笑んでみせた俺に、カイさんがクシャリと顔を歪めた。 「っ、……ユウちゃんは、なんで」 (……なんで?) 尋ねるというよりは、戸惑いが零れ落ちたような呟きだった。 (なんで、か) 「あなたが好きだからです」と言えたなら、どんなに良かっただろう。 「……お礼と、遅い誕生日プレゼントですって。案外、人にあげるのが好きな性分なのかもしれません」 「っ」 カイさんが目を伏せる。 下唇を噛む仕草は、初めて見るものだった。 「……? カイさ」 「嬉しい」 「え?」 「演技とか、じゃなくて。本当に、嬉しい」 絞りだすように呟いたカイさんが、収められていたネックレスを取り出す。 唖然とする俺の前でカイさんはチェーンを首に回すと、数秒して首後ろから手を放し、俺をみた。 照れくさそうに、泣き出しそうに、真っ赤な頬ではにかむ。 「……ありがとう」 「っ!」 心臓がドクリと胸を打つ。 冷静だった筈の脳内が、一気に沸騰する感覚。
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

146人が本棚に入れています
本棚に追加