カワイイ俺のカワイイ本当

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『それもきっと、次に来る時には解消されているでしょうし』 何処か核心めいた笑みを浮かべていたレナさんの姿が、混乱のノイズが犇めく脳裏に掠めた。 「っ、時成!」 『はい』 「俊哉は何処にいる!?」 『"Good Knight"の周辺を捜索して貰ってます。けど、今のところ見つけたって連絡はきてません』 「俺もこっちから辿ってみる。お前は拓さんに電話して、カイさんから連絡が来てないか確認してくれるか」 『わかりました』 通話を切り、表示されている時刻から逆算しても、そろそろ店に戻っていないとおかしい。 日中でも薄暗く、表通りから隔離されたかのような雰囲気を放つ裏路地は、一秒毎に光を失い、濃い黒に飲み込まれていく。 等間隔に並ぶくたびれた電灯の心許ない薄明かりの中、自身の鳴らすヒールの音だけがカツカツと忙しなく響き渡る。 蹴りあげた後ろ足にスカートが弾かれ、引き寄せられた前面が太腿に纏わりついて煩わしい。 こんなことなら、ズボンかショーパンで来るんだった。 (っ、どこだ……!?) いつもカイさんと並んで歩く道を駆けても、それらしき人物は一向に見当たらない。
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