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息苦しさに足を止め、肩で息を繰り返しながら覚束ない手で鞄からスマートフォンを取り出すと、時成からの受信にライトが点滅していた。
『連絡がとれないみたいです』
沸騰していた身体中の血液が、瞬間に凍りつく。
「ユウちゃん!」
「! 俊哉」
対面から駆けてきた俊哉が俺の前で立ち止まり、両膝に手をつき項垂れたまま、荒い息を繰り返す。
長い間探してくれていたのだろう。
特別な手入れを好まない髪は、乱雑に跳ね上がっていた。
「ごめん、全然、みつかんない」
「っ、いや」
『迷惑をかけて悪い』とか、『俺のためにありがとな』とか、告げるべき言葉はいくらでもあるというのに、停止したままの脳が上手く伝令を出せず、俺はただ狼狽えたまま俊哉を見つめる事しか出来なかった。
額に汗を浮かべた俊哉が、俺を捉えて瞳を緩める。
「ボロボロだね。そんなに必死な悠真をみたの、いつぶりだろ」
「!」
俊哉は上体を伸ばして、目を丸くする俺の肩を小突いた。
「俺に気を回す暇があるなら、早く見つけないと」
「っ、ああ」
「俺はこの周辺の路地をもう一回探してみるから、悠真はカフェの方に戻りながら捜索範囲広げて」
「わかった」
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