カワイイ俺のカワイイ本当

14/32

146人が本棚に入れています
本棚に追加
/238ページ
悲痛な顔でレナさんが固まる。 俺の言葉には容赦がない。わかっていた。けれどもここで、手を緩める訳にはいかない。 俺に落ち度があったとはいえ、彼女は俺の、『一番』を傷つけた。 「い、嫌……ウソよ。だって、ユウちゃんは」 「残念ですが、あなたの『好意』は、幻想に向けられた都合のいい『期待』でしかありません。『ユウ』は『俺』の一角です。そして『俺』は、あなたを『客』の一人としか思っちゃいない」 「っ!」 「むしろ、迷惑です。勝手な妄想で、俺の周囲を巻き込んで。『客』としての節度が守れないのなら、金輪際、二度と俺の前に現れないでください。もし、頭が冷えて、『客』としてご来店くださるのなら……その時は『ユウ』として、ちゃんと代金分の『サービス』をご提供させて頂きますよ」 ニッコリと微笑んでみせた俺にレナさんは赤い唇を戦慄かせると、歪んだ顔を覆ってその場から駈け出した。 カツカツと響くヒールの音が、夕暮れの空に消えていく。 俺がもっと早くに気づいてあげてたなら、もう少し上手く、深手を負わせること無く躱せていたいたのだろう。 自身の力不足に「ごめんなさい」と胸中でもう一度謝罪して、俺はゆっくりとカイさんへ振り返った。
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

146人が本棚に入れています
本棚に追加