カワイイ俺のカワイイ本当

16/32

146人が本棚に入れています
本棚に追加
/238ページ
ごめんね、カイさん。 最後の最後まで振り回してしまった謝罪を胸中に、俺はもう一度、今度は彼女にも意図が伝わるように、ゆっくりと紡いだ。 「『俺』の、本名。瀬戸悠真っていいます」 「!」 「『ユウ』っていうのは、店で使ってる名前で。……オトコの娘カフェで、働いているんです。さっきの彼女は、懇意にしてくださっていたお客さんで。……巻き込んでしまって、スミマセンでした」 「っ、それは、それよりも……っ、どうして……?」 絞りだされた困惑の声が、心臓にチクリと針を刺す。 夕陽の紅を反射して揺れ動く瞳が、場違いにも、綺麗だと思ってしまった。 「好きです」 「っ」 「『俺』は、『あなた』のことが、好きです」 「!!」 一文字一文字、はっきりと告げた俺に、彼女は硬直したまま更に目を見開く。 初めて見る顔だ。この人は本当に驚いた時は、こんな顔をするのか。 覚えていたい、と脳裏の片隅で思いながら、俺は握る指先に力を込め、『本当』の事を口にする。
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

146人が本棚に入れています
本棚に追加