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「……初めは、利用してやろうと思ったんです。由実ちゃんへの株上げと、似た業界で働く者として、技術を盗んでやろうと思って。ついでに仲良くなれれば、強力なツテになると思いました。……全部、計算の上で近づいたんです。好意なんて、全くありません。酷いでしょう?」
自嘲気味に苦笑するも、彼女は微動だにしない。
「……それなりに、自信はあったんですけど、『カイさん』は意外と手強くって、全然思うように攻略させてくれなくって。苦労しました。どうしたら、気を許してくれるのかって、散々悩んで。……そうやって考えれば考える程もっと知りたくなって、知ろうとすればする程、『カイ』さんと、垣間見える『あなた』に、振り回されるようになりました。気がついた時には、好きになっていて。……望んでいた以上に、欲しくなりました」
「っ」
「上手く隠してたつもりだったんです。けど、拓さんや吉野さんにはバレちゃって。二人共優しいから黙っててくれて、おかげでカイさんも『まだ』、気づかないままでいてくれて。……知られてしまったら、拒絶されると思いました。それよりは、善良でカワイイ『ユウ』として、このまま、『カイ』さんの『客』の一人でもいいかなって思ってたんですけど……やっぱり、駄目ですね」
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