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「だからね、思うんだ。私達は私達で、いいんじゃないのかなって。あ、勿論、ユウちゃんがそれで良ければだけど」
「……そうですね」
皆が皆、同じではない。
そもそも、無理矢理枠にあてはめるのならば、俺達は初めから『逸脱してる』部類だろう。
今更、『本当』も何もあったもんじゃない。
俺達の『嘘』は、『嘘』だけど、『本当』だ。
立ち上がった俺はスカートの裾と膝を軽く叩いて、身を屈めて彼女に片手を差し出した。
「帰りましょうか」
「……うん」
柔い笑みと共に乗せられた掌を引っ張って、今度こそ立ち上がった彼女も自身の膝を片手で払った。
もう片側に握られているのは、チェーンの切れたネックレス。彼女は一度、物憂げな表情でそれを見遣ってから、そっとズボンのポケットに落とした。
「行こうか……って、あ、次の時間、絶対過ぎてる……!」
「あ、一応、拓さんにも状況は伝わってる筈で……ん?」
慌てて携帯を取り出す彼女に倣い、俺もスマフォを確認しようと鞄を開いて、見当たらないそれに首を傾げた。
途端に記憶が蘇る。
たしか、俊哉に会った時に、持っていろと手渡されていた気が――。
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