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(やっべ!!!)
視線を巡らせたのは路地の入り口付近。微かな電灯を反射している画面は、間違いなく目的の形状をしている。
嫌な予感に駆け寄り拾い上げると、画面には蜘蛛の巣のような亀裂が入っていた。
「やっちゃった……」
咄嗟に飛び出した時に、勢い良く手放したのだろう。
僅かな望みにかけて電源ボタンを押し込んでみると、なんとか画面に光が戻った。
途端に、着信履歴がいくつも表示され、行き場をなくしていたメッセージがポコンポコンと届き始める。
「大丈夫?」
「あ、はい……。画面は粉々ですけど、一応、中身は無事っぽいです……。拓さん、連絡とれました?」
見上げた彼女が苦笑する。
「メール来てた。拓さんが代わりに行ってくれてるみたい。でも、店番を知り合いに任せてるから、エスコートが終わるまでには帰ってきてって」
「知り合い……って、まさか」
このタイミングで『知り合い』と言ったら、時成と俊哉では。
受信を終えたメッセージを慌てて確認すると、時成からの新着メッセージには『ごゆっくり』と書かれていた。
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