カワイイ俺のカワイイ本当

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「……私は別に、今のままでもカワイイと思うけど」 「……そうですか。なら、まだ暫く伸ばしておきます」 「うん、っ!?」 彼女の肩がビクリと跳ねたのは、俺が拙い握りを、指を絡めたモノに変えたからだ。 これで余裕の笑みを向ける事が出来たのなら、かっこ良くキマるというのに、わかっていながらも出来ないのは、俺が所謂『ヘタレ』だからなのだろう。 ――あつい。 触れ合った掌どころか、身体も、顔も、耳も、頭のてっぺんまで、全部あつい。 彼女を見上げる事も出来ずに、それでも振りほどかれない安堵に心を緩めつつ、俺も前を向いたままただ口だけで尋ねた。 「……名前、訊いてもいいですか?」 「……藍沢なつき。夏生まれだし、名前にも『なつ』って入ってたから、連想ゲームの要領で、海の『カイ』」 「そうだったんですか。……じゃあ、なつきさん、ですね」 「呼びやすい方でいいよ。どっちも、私だから」 照れを含んだ声で告げた彼女は、それから少しの逡巡を挟んで、やはり照れたように、はにかんだ。 「ゆうま、なら、ユウちゃんは、ゆうちゃんだね」 混ぜ込まれた名前に息が止まりそうになっただなんて、絶対に、誰にも言えない。
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