カワイイ俺のカワイイ本当

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「二人も、収まるトコに収まったの?」 「いっ!? そ、れは……っ!」 「拓さん、それ訊く必要ありますかー? めちゃくちゃ駄々漏れじゃないですー?」 「いやーでもやっぱホラ、迅速な報告はお仕事のキホンだから。ね? カイ」 「えっ、と、その……」 チラリと背後を振り返ると、当惑気味に頬を染めたカイさん。視線を戻すと、拓さんの口角がニヤニヤと上がっている。 時成の言う通り、わかっているだろうに言葉にしろと迫るのだ。 意地が悪い。恨めし気に見遣る俺の視線にも、拓さんはどこ吹く風で「ほらほら」と促す。 ここは俺が助け舟を出す場面なのだろうか。 意を決してぐっと顎を上げると、フロアの床を進む足音がして、肩にそっと指先が触れた。 カイさんだ。見下ろす顔がふわりと緩む。柔らかく、温かく、でも、愛おしげに無邪気に。 「『特別』な人の『特別』って、嬉しいですね」 「っ!」 結局どの道、俺よりも彼女の方が何枚もウワテらしい。 真っ赤な顔で湯気をあげる俺に、「ごちそーさま!」と笑う声が重なった。
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