カワイイ俺のカワイイ本当

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*** 高く照りつける日差しに、汗ばむ肌。ナチュラルに見えるようにバッチリと施した化粧が、汗に流れ落ちそうでハラハラする。 短い袖が薄く透けるワンピースは、先日購入したばかりだ。 なんだかんだで気合が入ってしまうのは、仕方ないだろう。だって今日は、大切な大切な、大好きなあの人との『デート』なのだから。 「……ゆうちゃん!」 熱を返すアスファルトに現れたその人は、常よりも少し短いスラックスに白いリネンのノースリーブのシャツを合わせている。 常よりも露出の多い肌にうっかり心臓が跳ねたが、心中を律して平常を装った。 「おまたせ」と和らいだ瞳に軽く首を振る。待ち合わせ時間まで、まだ数分ある筈だ。 こっそりと掌をスカートで拭い、少しだけの躊躇いを挟んでから、無防備な細い指先を握りこめた。湿り気を帯びた熱い外気にはホトホトまいっているというのに、この体温は、心地いい。 「行きましょうか、なつきさん」 「うん」 照れくさそうにはにかんだ彼女の薄く浮いた鎖骨の上で、銀に縁どられた海色が光った。
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