カワイイ俺のカワイイ再挑戦

12/20
前へ
/238ページ
次へ
「……それは」 "俺"が、カイさんの"客"だから? 「ん?」 「いえ、何でもありません」 笑顔で首を振り、喉元まで出てきたその言葉を飲み込む。 (だって、おかしいだろ) 俺の目的は"カイ"さんの"オトモダチ"になる事で、"特別"になる事じゃない。 この質問は無意味だ。 「大丈夫ですよ」 自身の心に生まれた僅かな引っ掛かりを意図的に無視して、真っ直ぐにカイさんを見上げる。 「僕は、カイさん以外を選ぶつもりはありません」 この言葉は紛れも無い真実だ。 たぶん、これからも。"嘘"を積み重ねる俺の、揺るぎない"本当"。 「……そっか。ありがとう」 俺の隠した邪な計画など露知らず、カイさんは安心したような笑顔を向ける。 チクリ、と針を刺したような微かな痛みは、きっとその笑顔を裏切っている事への罪悪感。 (裏切り? いや、只の些細な一時の"嘘"だ) "オトモダチ"になった後も、この打算的なきかっけを伝える必要はない。 真実を知るのは、俺と俊哉と、時成だけ。 誰も損をしない。 誰も、傷つかない。 「なんか重いよね、本当ごめん」 「そんなコトないです。嬉しいですよ、僕としては」 貴重なカイさんの照れ顔も見れましたし、と満足気に頷く俺に、カイさんは再び口元を覆う。 演技ではなく自然と変わる表情。 本当の"カイ"さんは、感情豊かな人なんだろう。 (また一歩、近づけた) 「今日はパフェを頼んでみようと思ってるんで、カイさん手伝ってくださいね」 「……ユウちゃんの頼みなら、喜んで」
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

147人が本棚に入れています
本棚に追加