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「ほい、お待たせしました。いちごパフェと、紅茶とコーヒー」
「あ、ありがとうございます」
目の前に置かれていく陶器を見つめて、ひざ上で小さく拳を握る。
絶対に、バレないようにしないと。カイさんにだけは。
「それと、取り皿も。必要でしょ? これで全部かな」
ざっと一通り確認すると伝票を伏せ、「ごゆっくり」と軽く頭を下げ去って行く。
目の前には真っ赤ないちごが山を作るガラス製のパフェグラス。
今回は専用のパフェスプーンが添えられているため、カラトリーを手渡しされる心配はない。
(……パフェってどう分ければいいんだ?)
綺麗に積み重なる層とにらめっこをして、今更な疑問に頭をひねる。
俊哉や時成相手ならこのまま順に渡して食べ進める所だが、カイさん相手ではそうはいかない。
中央よりやや左側からスプーンを差し込み、あまり崩さないようにそっとすくい上げて取り皿へと横たえる。
「……見た目悪くてすみません」
「ううん、ありがとう」
無言のまま楽しそうに見守っていたカイさんの前に置くと、「嬉しいよ」と返してくる。
(なんだかな……)
予想以上に無残な姿だ。
今度はパフェ以外にしよう、と取り皿の中身に決意を固めていると、カイさんが伸ばした指先でカツリでガラスを鳴らして。
「ほら、そんな顔してないで食べて」
「っ、いただきます」
片手を口元に添えて笑う、あの仕草。
慌てて一口を含めば、いちごの酸味と生クリームのまろやかな甘さが舌の上に広がる。
(うん、やっぱり美味しい)
「どう?」
「おいしいです、スゴく」
「ワッフルとどっちが好き?」
「う~ん……でもやっぱりワッフルの方が好みですかね。って、なんだか今日は質問ばかりですね」
「気になる人の事は知りたくなるから」
「そ、ですか」
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