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(急にダイレクトだな!?)
サラリと告げられた"告白"に、ついピタリと手元が止まる。
あからさまな動揺。
"キャラ設定"だと理解していても、体温が上がってしまうのは悲しい男の性だろう。
スプーンがガラスをこする度に微かに響く高音に集中して、クリームと砕かれたスポンジをせっせと咀嚼していく。
対面でゆっくりとスプーンを口に運びながら優美にコーヒーカップを傾けるカイさんは、至ってご機嫌だ。
「……お客さん、勘違いしませんか?」
こういう商売では、"サービス"を本気にした客とのトラブルが後を絶たない。
恨めし半分、興味半分でポソリと呟いた俺に、カイさんは口角を上げる。
「嫉妬?」
「違いますよ。純粋な"心配"です」
茶化してくるカイさんに緩く首を振れば、数秒俺の表情を観察して。
カップを置いくと弱ったというように眉を落とす。
「相手は選んでるよ」
きっと、経験があるのだろう。断言されなかった返答にその意図を汲み取る。
いくらこちらが気をつけていても、対処しきれないのが現状だ。
ましてやカイさん程の人気なら、様々な人を相手にしてきているだろう。
「……ホント、気をつけてくださいね」
「……うん」
困ったような笑みに微かな違和感。
続いて響いた控えめなバイブ音に、終了時刻が近いのだと悟る。
(もう、か)
断りを入れて席をたつカイさんの背を見つめながら、紅茶を流し込む。
今日の予約は三十分だ。十分の差が思ったよりも大きい。
一時間枠が理想だが、やはり空きが中々ないのだ。
「ごめんね、お待たせ」
「あと五分ですか?」
「うん、早いね」
「同じこと思ってました」
「一緒ですね」と小首を傾げた俺に、カイさんは肩を竦めて。
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