カワイイ俺のカワイイ再挑戦

18/20
前へ
/238ページ
次へ
「ユウちゃんも気をつけてね」 「何をですか?」 「可愛い子に"勘違い"はつきものだから」 「、」 揶揄しているのは先程のやり取りだろう。 本音は「カイさんにだからです」と返したい所だが、きっとそれではまたカイさんの疑念を深めてしまうだろう。 「相手は選んでますよ」 笑顔で同じ言葉を返し立ち上がった俺に、カイさんは鞄を手渡しながら少しだけ眉を寄せて。 「それなら良いけど……」 「不満ですか?」 「心配してるだけだよ」 珍しく主導権はこちら。 このチャンスを逃すほど、俺は馬鹿じゃない。 「心配、しててください」 「え?」 「そうすれば、俺がカイさんの心配をしててもいい理由になるでしょ?」 「、」 目を見開いて固まるカイさんにニコリと笑んで、伝票を掲げながら「先、外で待っててください」と背を向ける。 「あ、うん」と。虚をつかれたような声に奥歯で笑いを噛み殺して、背筋を伸ばしたままレジへ。 どうやらカイさんは、"言われる"方には慣れていないらしい。 少しだけ、「嬉しい」と感じてしまうのは何故だろうか。 「お待たせしました! どう? 美味しかった?」 レジで伝票を処理してくれるのは、勿論あの店員さん。 肯定した俺に「でしょでしょ~!? もうこの味にたどり着くまで何回試作を重ねたことか……」と大きく息をつく。 それから店外へと出て行くカイさんに片手を上げて、扉が閉まったのを確認すると口端に片手を添えて。 「カイね、本当はブラックよりミルクと砂糖たっぷり派。良かったら参考にして」 「へ?」 そっと耳打ちされたのは、貴重な本当の"彼女"の情報。 どうして。 顔を跳ね上げた俺に、その人はやはりカラリと笑って。
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

146人が本棚に入れています
本棚に追加