カワイイ俺のカワイイ再挑戦

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「あんたがあんまりにも健気だからね。おねーさんちょっと応援したくなっちゃった」 「え、と」 「あたし、吉野里織(よしのさおり)。またのお越しをお待ちしてます」 「っ、はい! ごちそうさまでした」 下げられた頭にペコリと返し、手を振る吉野さんに見送られながら店を出る。 (応援って、バレたワケじゃないよな?) 彼女と言葉を交わしたのはたったの数回。 それもほんの形式的なものばかりだ。 俺の目的が見抜かれた可能性は極めて低いが、それなら彼女の"応援"とは何を示していたのだろうか。 (ってかあの人、俺を"どっち"だと思ってるんだ?) 「ごちそうさま」 「っ、いえ、」 俺に気づき、振り返ったカイさんに困惑は胸中に押し込める。 リークしてもらった情報は、次回にでもありがたく使わせて貰おう。 「付き合って頂いてありがとうございました」 「こちらこそ。こんなこと言ったら怒られるかもだけど、ユウちゃんといるの楽しいからいい息抜きになるよ」 「拓さんには黙っておきます」 「うん、お願い」 苦笑して頬を掻くカイさんに微笑んで、「それじゃあ」と手を前で組む。 この後も予約が埋まっていた。早めに帰してあげないと。 「また、次に」 「うん。待ってるね」 去り際はあっさりなくらいが丁度いい。 頭を下げて背を向けようとすると、カイさんが「そうだ」と零す。 「今日は"この間"みたいなの、やらなかったね」 「っ」 (気づいて、いたのか) 特にそれらしい反応は無かった為、てっきり覚えていないのかと。
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