カワイイ俺のカワイイ不安

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階段下でカイさんは俺が並ぶのを待って、「今日はどうしたい?」と俺の顔を覗き込む。 さて、どうしたものか。 個人的には疲労も残るしゆっくりお茶な気分だが、休日の夕時は既に混雑している店が多い。 事前の予約だったら前回のように対応してくれている可能性があるが、今回は急すぎた。 流石に"念のため"はないだろう。 「ユウちゃん」 考えこんだ俺を見ていたカイさんが、ニコリと微笑む。 「"Good Knight"の意味は?」 「へ? えーと、そのまんまで良ければ"良い騎士"?」 「うん、正解。だからね、"優秀な騎士"たるもの、可愛い"姫"のご要望には忠実に応えてみせるよ」 「、」 まさか。 目を見張る俺にクスリと笑んで、カイさんは自身の胸元に片手を添える。 「ご所望は?」 「……あの喫茶店に、行きたいです」 「かしこまりました」 「じゃあ、行こうか」と迷うこと無く歩きだしたカイさんの横に慌てて並んで、その横顔を見上げる。 チラリ、と。向けられた視線には満足気な色。 「予約、してるんですか」 「この時間だし、もしかしたらと思ってね。良かったよ、ユウちゃんが予約してくれたのがまだ何とかなるタイミングで。カッコつけてみたけど、正直"ラッキー"ってヤツだね」 肩を竦めてみせるカイさんに、返す言葉が見つからない。 どうしてそんなに頑張ってくれるのかとか、他の人にもこんなに気を回しているのかとか、"無意味"な感情ばかりが渦巻く。 顔を伏せたまま何とか「ありがとうございます」と呟けば、「喜んで貰えたなら嬉しいよ」と柔らかな声が落ちてくる。 目を見て返せない俺を、カイさんはどう思うのだろう。 「今日は髪、いつもと違うね」 気を紛らわせようとしてくれたのか、さり気なく振られた話題に少しずつ思考を落ち着けていく。
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