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「ほいっ! お待たせしてゴメンね! 注文決まってたら伺いますけど?」
お冷とお絞りを置いた吉野さんに尋ねられ、既に注文を決めていた俺はメニュー表を指差す。
「イチゴのワッフルで。あと、ホットの紅茶と、カイさんはコーヒーでいいですか?」
「いつもごめんね。オレもホットにして貰える?」
「じゃあ……」
合わさる吉野さんと俺の視線に、妙な結託感。
「コーヒーのホットを一つ。ミルクで」
「……え?」
「かしこまりました! 少々お待ちくださいね」
カイさんは驚いたように俺の顔をしげしげと見つめて、それから俺に向けてこっそりと親指を上げて去った吉野さんの背を視線で追いかける。
(この時カイさんの顔を捉えた後ろの女の子達が黄色い声を上げたが、カイさんはそれどころではないようだ。)
暫くしてこちらへ向き直ると、肘を机について「やられた」と言うように手の上に額を預ける。
「里織だな……」
「答えは黙秘で。なんで黙ってたんですか?」
「言ってくれればいいのに」と続けた俺に、カイさんは今度は口元に手をずらすと気不味そうに視線を逸らす。
「カイさん?」
「あー……と、えっと、ブラックの方が大人っぽいかなって思って、"こーゆー時"はブラックにしてて」
「ムリして飲んでたんですか?」
「無理って程じゃないけど、まぁ、苦いなーとは思ってたかな……」
「それをムリしてるって言うんですよ……」
呆れたように息をついた俺を、カイさんが不安げにチロリと見遣る。
ヤバイ、なんか。
(……楽しくなってきた)
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