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「いいじゃないのミルクの一つや二つ! みみっちいコト言わない!」
「それを言うなら、いるかいらないかなんだけど……」
「そうそうユウちゃん、こっそりソース多めにしといたから、他のお客さんには内緒ね」
「あ、スミマセン、ありがとうございます」
「だから、聞いて」
「聞いてる聞いてる! じゃあごゆっくり~」
ここまで振り回されるカイさんも新鮮だ。
次のオーダーの呼び止めに向かってしまった吉野さんに、カイさんは溜息をついてミルクを手に取る。
お、と。
思ったのだがそのまま沈黙を保って見守っていれば、ハッと気がついたようにそのままカイさんが制止する。
本当にミルク派なのだろう。
無意識で注ごうとした自身を恥じるように、一気に顔が赤くなる。
なんだそれ、めちゃくちゃレア。
「っ、ユウちゃん、あの、」
どう言い訳したら良いのかわからない。
プチパニック状態なのか、真っ赤なまま焦り顔で必死に言葉を探すカイさん。
なんというか、コレは非常に。
(……かわいいな)
「どうぞ、僕のコトは気にせずドバッといってください」
「いや、でも、さっき」
「良いです良いです。あ、でも砂糖の投入権は譲りませんよ?」
「っ、なんかホント……ゴメンね」
羞恥をありありと浮かべる顔を隠すように俯きながら、肩を縮こまらせてカイさんがミルクピッチャーを傾ける。
もはや吹っ切れたのか、半分程をたっぷり注ぐと真っ黒なコーヒーがキャラメル色に変わっていく。
その間に切り分けてたワッフルを目の前に置いて(カラトリーの手渡しは譲ってくれなかったので、切り分けた方をカイさんに渡した)、カイさんの要望通り二つの角砂糖をコーヒーへ落とす。
これだけ甘くするのなら、さぞかしブラックは辛かっただろう。
よく平気な顔して飲んでたものだ。
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