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「因みにカイさんの好きなワッフルはどれですか?」
「……イチゴ、だね」
「……その反応は本当みたいですね」
「もうユウちゃん相手に誤魔化そうとしても、バレちゃいそうだからね」
腹をくくったようにワッフルに生クリームとソースをたっぷりつけて口に運ぶカイさんに、思わず笑みが漏れる。
成る程。これが本来の"彼女"なのか。
見えてきた仮面の奥にご機嫌にワッフルを頬張っていると、「そういえば」とカイさんが落ち着いた声で言う。
「ユウちゃんは、"オレ達"にカッコ良さを求めてるワケじゃないんだね」
「っ、え?」
「いや、勿論皆がそうってワケじゃないんだけど、やっぱり"オレ達"のお客さんって空想上のカッコ良さみたいなのを求める人が多くて。けどユウちゃんはそうじゃなくて、自然な時の方が嬉しそうにしてくれるから」
「、」
ツクリ、ツクリ。痛みを訴える心臓が、どうするんだと嘲笑う。
"カイ"じゃなくて、"アナタ"を知りたい、違う。近づきたい、目的の為に。
それだけ、それだけ?
「それは……」
脳内で木霊する感情の渦。駄目だ、それは、言ったら。
「、カッコいいカイさんも素敵ですけど、やっぱり、普通にしてくれていた方が、話しやすいです」
不自然さは感じなかったのか、カイさんは目元を緩めて「そっか。オレも自然体なユウちゃんの方が好きだしね」と納得したように頷いて、コーヒーを美味しそうにコクリと飲む。
単純に、些細な疑問だったのか。焦った。
未だ早まる鼓動を押さえつけるように紅茶を流し込んで、ふぅと密かに息をつく。
目的の比重が確実に変わってきている。情が移った、のだろう。
ただの好奇だけでは無いと、認めざるを得ない。
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