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(……まぁ、仮初の"オトモダチ"じゃなくて、本当に友人関係になってしまえばいいだけの話しだし。何も、問題ないか)
うん、そうだと。
半ば無理矢理納得して、その後もカイさんと他愛ない会話をしながらワッフルを咀嚼していく。
「今日、拓さんじゃなくて残念だったでしょ」と尋ねるカイさんはニコニコとしていたので、「はい、ちょっとだけ。寂しがってたって伝えてください」と頼んでみたら「その要望には応えられないかな」と笑顔で却下されてしまった。
可愛い"姫"のご要望には~というコンセプトはドコに行ってしまったのか。
ジトリと見つめた俺に、「だからこそだよ」とカイさんは笑う。
穏やかで暖かい空間。
春の日差しのような。
「あ、ちょっとゴメンね」
「、はい」
ああ、もうか。
店内がいつもより混雑しているせいか、携帯電話を取り出したカイさんは今日は立ち上がらずに口元を手で隠して簡素なやり取りをしている。
そういえば、すっかり忘れていた。
後ろの女の子達はどうなったかと盗み見ると、既に自身達のお喋りに夢中のようだ。
勝った、てコトでいいんだよな。
うんそうだと最期の紅茶を流し込んで、通話を終えたカイさんに視線を戻す。
「あっという間ですね」
「うん、ホント」
「って思っていつも一時間枠狙ってるんですけど、カイさん予約埋まり過ぎです」
「あー……ゴメンね」
「冗談ですよ。カイさんが悪いワケじゃないですから」
「行きましょうか」と立ち上がり、鞄を受け取って会計へ向かう。
女の子達の視線は再びカイさんを捉えていたが、当初と比べると随分密やかなのは俺に遠慮しているからだと思っておく。
会計に立つのは勿論吉野さん。
そこまで広くない店舗とはいえ、休日に一人でホールに立つのは大変だろうに、明るい笑顔は変わらない。
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