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よくわからないで"応援"してくれたのか。
心が広いというか、大らかというか。
ポカンと口を開けたままの俺に、悩むのを止めた吉野さんは「そうねー」と笑って。
「どっちでもいいのよ、あの子を大事にしてくれる人なら。そういった点で、あたしの目からはユウちゃんがベストかなって。是非また来てちょうだい!」
「あ、はい。是非! ごちそうさまでした」
手を振る吉野さんに頭を下げると、オーダーの声に吉野さんが小走りで去って行く。
店の外に出ると待っていたカイさんの眉間には微かな皺。
中々出てこない俺を心配してくれていたらしい。
「里織のお喋りに付きあわせてゴメンね」と謝られ、「パワフルな人ですね、吉野さん」と笑って返す。
それからあ、と気がついた。
あれはまるで、俺がカイさんを恋愛対象として狙っているかのような口ぶりだった。誤解だと伝え忘れていた。
まぁ、それはまた今度会った時でいいだろう。
そう結論づけて、カイさんを見上げる。
「カイさんはまた店に?」
「うん、まだシフトがあるから」
「お疲れ様です。身体壊さないでくださいね」
「大丈夫。息抜きもさせて貰ったしね」
少し屈んで俺に視線を合わせたカイさんの微笑みは、いつもの"カイ"さんよりも無邪気さが強い。
おかしい。どうして俺は、こんなにもドキドキしてるんだ。
「人多いし、気をつけて帰ってね」
「、はい。それじゃあ、また」
「またね。拓さんには今日ユウちゃんに会ったって自慢しとく」
手を振るカイさんに手を振り返して、今日は駅へと足を向ける。
チラリ、と。角を曲がる前に一度だけ振り返ってみると、まだそこで佇んで見送るカイさんがにこやかな笑顔で再び手を振ってくれる。
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