カワイイ俺のカワイイ接客

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世間一般のティータイムである十五時過ぎには、平日でも足を休めようと一息つきに来店されるお客様で、店内の半分程度は埋められる。 オーダーも軽食が中心の為、こちらも比較的手持ち無沙汰だ。 ゆっくり店員とのコミュニケーションを取りたい方には絶好の時間帯だろう。 事実、声掛けが一番多いタイミングでもある。 爽やかなミントグリーンに茶色いラインの入ったミニスカートのメイド服は、甘すぎずもしっかりと可愛さは抑えていて気に入っている。 難点は真っ白なエプロンをつけると、胸元のデザインが半分以上隠れてしまう所だろうか。 せっかく凝った衣装なのだから、腰下からのモノにするか、胸元を開けたエプロンにしたらいいのにと常々思っている。 「あ、ユウちゃん先輩、オレンジも一個入れてくれますかー」 「おー。氷は?」 「特に指定なしですー」 「了解」 アイスティーを注ぎ終えた俺はグラスをもう一つ手に取り、汚れや破損が無いかチェックをして、製氷室から氷をひとすくい入れる。 冷蔵庫から取り出したのは、プラスティック製のボトルに入った百パーセントのオレンジジュース。 注ぎながらチラリと時成を見遣ると、アイスクリームディッシャーで必死にバニラアイスを丸くしているようだ。 意外と力がいる作業で、時成の肘も上がっている。 「ほら、オレンジとパイ」 「わーさすが先輩ー。 ありがとうございますー」 ぐぎぎ、と奮闘する時成のトレーにはグラス、その横にアイスの飾りになるハート型に繰り抜かれたパイ入りの容器を置いてやる。 あともう少し、といった所か。 俺はアイスティーを乗せたトレーを左手に、右手は軽く添えて注文を頂いた席へ。向かう、つもりだった。 開いた扉、来店を知らせる涼やかなベルの音。 足を止めて入口へ笑顔を向けて、捉えた人物に息を呑む。
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