145人が本棚に入れています
本棚に追加
カラカラと笑う拓さんの言葉に、眉を寄せるカイさんの顔が浮かぶ。確かに、客のイメージを最優先するカイさんなら、即座に指摘するだろう。
壁側を背にしてソファーの収まりのいい位置に落ち着いた拓さんは、俺の渡したメニュー表を受け取りながらしげしげと視線を上下する。
「へー、ここのメイド服って薄緑なんだ。ピンクじゃないの?」
「一応性別上、ピンクよりは抵抗が少ないんじゃないかって案みたいですよ」
「ふーん、ユウちゃんなら絶対ピンクも似合うと思うんだけどなー……。でもいいね。ユウちゃんが可愛いのはいつものコトだけど、やっぱメイド服ってこう、特別というか、主人感がたまらないというかさ」
「……」
先程からちょくちょく発言がおじさん臭いのは、仕事ではなくプライベートとして素の拓さんに近い証拠なんだろうか。
呆れ顔で「拓さん」と名を呼ぶと、「ゴメンゴメン」とメニュー表を開く。
「どうしよ、お腹すいたからなぁー……」
「お昼まだなんですか?」
「うん、"お仕事"帰りでさー。あ、カイは今日お休みだから」
「……知ってます」
バレる事を良しとしなかった俺に、心配ないと告げたかったのだろう。
予約の件もあるし、今日のカイさんのシフトは事前に把握済みだと意図した俺に、拓さんは「さっすがぁー」と口角を上げる。
「ん!? このオムライスってもしかしてハートとか描いてくれるヤツ!?」
「そうですね。一応、簡単なモノならハート以外も描けますよ」
「いや、ハートがいい! オムライスプレートで!」
最初のコメントを投稿しよう!