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まるで、お菓子売り場でお気に入りのヒーローパッケージを見つけた少年のような。
思わず吹き出しながら「お飲み物は?」と尋ねれば、「グレープフルーツジュースで」と拓さん。
「お料理と一緒でいいですか?」と返した俺に、「それでお願い」と頷く。
オーダー用紙に同と付け加え、メニュー表を回収する。
「少々お待ちください。お冷は直ぐに用意しますので」
「うん、よろしく」
机端に置かれたデザートメニューが気になるのか、手元に引き寄せながら手を振る拓さんに軽く頭を下げパントリーへ。
キッチンスタッフへオーダーを告げて、お冷とお絞りを用意しようと製氷機へ視線を移すと、いつからいたのか、既に準備バッチリの時成の姿。
両手でトレーを持ち、エサを前にした「よし」待ちのワンコのように、キラキラとした期待の目を向けている。
「……よし」
「! いってきますーっ」
ブンブンと勢い良く左右に振られる尻尾が見える。
普段の時成はどちらかと言うとのんびりまったりを好む猫属性だが、"好物"を目の前にするとたちまち興味津々な子犬へと変貌する。
いや、子犬の皮を被った、肉食獣か。
以前も言ったが時成は"バイ"だ。
男性か女性かという性別は気にせずに、自身の"好んだ人"が恋愛対象となる。
これまでの"お気に入り"を見ていると面食いなのが良く分かるが、本人はあくまで否定している。
「性格なんてよくわからない他人に"興味が湧く"としたら、"第一印象"しかないじゃないですかー」と。
そんな"第一印象重視"の時成が今日の拓さん訪問の一件を知り、みすみすチャンスを逃す訳もなく、本来この時間帯に勤務予定だった別の店員からシフトを譲り受けたと報告された時には、そこまでするかと呆れたモノだ。
が、今日の"念入りな"ナチュラルメイクと、いつもはストレートなツインテールの毛先が緩く巻かれているのを見てしまっては、もはやその気合の入れっぷりに感服である。
こうして多少なりとも機会を作ってやるのが、先輩としてせめてもの情けだろう。
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