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グラスチェックを終え、氷を入れてアイスティーを注ぐ。
ガムシロップとミルクは白い陶器の小皿の中に一個ずつ。
当店のロゴが印字された丸い紙コースターとストローもトレーに乗せて、未だ落ち着かなそうにソワソワとしている彼の元へ。
「お待たせ致しました。アイスティーでございます」
「っ!? あ、ハイッ!」
ニコリと笑んだ俺に、その彼は肩を跳ね上げながら姿勢を正す。
笑いを噛み殺しながら右手側にコースターを置き、その上にアイスティーのグラス。
ガムシロップとミルクの入った小皿もその側に添える。
彼の手前側にはストローを。
「ミルクとガムシロップはお入れになりますか?」
「あっ、はい、いれますっ」
「宜しければお入れしても?」
「へっ!? い、いいんですかっ?」
「ええ、手前失礼致しますね、"ご主人様"」
「っ」
単語に反応する彼を横目で捉えつつトレーを小脇に抱え、揃えた指先で陶器を引き寄せ、一つを摘み上げる。
パキリ。軽く音を立てたプラスティック製の容器からガムシロップをグラスへ流し込んで、同じようにミルクを。
ゴミ置きへと化した容器をトレーに戻して完了だ。
「よく混ぜてお召し上がりください」
「……ありがとうございます」
なにやらエラく感動しているようだが、コレぐらいのサービスは他店でもやっている。
という事は、やはり"メイド喫茶"なるもの自体初めてなようだ。
初めての"メイド喫茶"が、"オトコの娘"のメイド。
それも、一人で。
(そりゃまた随分とハードル上げたな……)
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