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「……普段も、その、スカートとかで、お化粧もしてるんですか?」
「え? あ、ええ。個人によりますけど、僕は普段もそうしていることが多いですね」
「それって、周りに、"変"とか言われませんか」
(ああ、もしかして)
過った可能性。
"こういう時"、俺は真実だけを口にする。
「全く言われない、と言えば嘘になりますけど、もう慣れましたね。僕の場合は、ならいっそ極めてしまって、"似合うね"って言わせてやろうと突き詰めたせいか、最近は殆ど耳にしませんけど。あ、でも学校では男の格好ですよ」
「親は……?」
「ウチは両親公認です。一人息子のせいか、"娘もいるようで二度美味しい!"なんて言ってますけど、それはあくまで僕の恋愛対象が"女性"だからなのかもしれないです。友人も理解のあるヤツなので、正直僕は恵まれてる方だと思いますよ」
「そう、ですか……」
「メイド同士であまり立ち入った話しもしないので全体を把握しているワケでは無いですけど、こっそりと隠れてやっている子や、逆に絶縁状態の子もいるみたいです。でも、それぞれが自分で決めた道なので、本人が"納得"しているんならそれでいいんだと思いますけどね」
「僕の意見としては、ですけど」と付け加えたのは、言葉の通りこの意見は"俺個人"の見解でしかないからだ。
環境が違えば、見方も変わる。
何を良しとして何を悪いとするのかなんて、個人のボーダーラインでいくらでも変わるのだ。
特に性的マイノリティの問題は。
非常にデリケートで、抱え込む苦悩も多い。
だからこそ"自分"で折り合いをつけていくしかないのだと、"アドバイス"を求める人には返している。
「もし仮に」。続けた言葉に、彼が顔を上げる。
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