カワイイ俺のカワイイ接客

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「かしこまりました」とメモを取り、一言置いてその場を後に。 リラックス、まではいかないが、少しは気を緩めてくれただろうか。 キッチンへ向かいオーダーを告げると、間もなく拓さんの注文したオムライスが出来上がるようだ。 スプーンとケチャップを用意しておくか。 クルリと向き直った先で、ホールの通路からジト目で見つめる時成が目に入る。 「……どーしたの、あいら」 時成はその位置から動こうとしない。 つまり、"そういう事"だ。 俺は呆れ顔を作りホールへ踏み出し、時成の側へ寄る。 集まる視線。時成は不貞腐れたようにむぅ、と頬を膨らませる。 「ユウちゃん先輩、楽しそうですねー」 「あいらは何がそんなに不満なの?」 言いながら膨らんだ頬を指先で突く俺。 プスッと空気を抜いた時成は口を尖らせて俯き、俺のエプロンの裾をキュッと掴む。 お客様方の視線は、熱い。 「ユウちゃん先輩の"お気に入り"は、おれだけで充分ですー」 「あいら……」 ザワつく店内。 言っておくが、コレも"サービス"だ。 特に"ユウ"と"あいら"は先輩後輩の関係であり、ナンバーワンとツーという立場でもある。 個人的に仲が良い、という要素も多分に含まれるが、俺達の"アクション"も名物の一つだ。 俺は「ごめんね」と苦笑して、少し高い位置にある頭を撫でてやる。 「少し放置しすぎたかな……。大丈夫。ご主人様も、メイドの皆も大好きだけど、一番可愛いのはあいらだから」 「っ! 先輩ぃーっ」 「よしよし。ちゃんとお仕事に戻れそう?」 「はいー、がんばりますー」 「いい子。さ、"ご主人様方"にちゃんとご奉仕しないと」 頷いたあいらはしょんぼり眉のまま、一番近い席の常連さん方の元へ。 「あいらちゃんはユウちゃんに甘えただなー」と笑われ、「だって先輩のコト大好きですもんー」と返しているのが聞こえる。
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