カワイイ俺のカワイイ接客

13/29
前へ
/238ページ
次へ
"ま、いいや"程度の話題だったのか。 肩透かしを食らったような気分だが、なんとかやり過ごせた安堵に胸中で息をつきながら、ハートの中に"拓さん"、プレートの手前部分にハートと"ユウ"の文字をデコレーションする。 「そーいえば、さっき来てくれたあのツインテちゃんも可愛いねー。ユウちゃんの後輩?」 「ええ、あいらは後輩で、ウチの人気ナンバーツーですよ」 「はぁ~どうりで!」 手を打った拓さんの前に、完成したプレートを置き直す。 拓さんは「わーそうそうコレコレ! かわいい! あ、写真撮ろ!」と興奮気味に取り出したスマフォでパシャリと撮影してから、「いただきます」と手を合わせる。 スプーンを手にして、オムライスをひとすくい。 「ん、美味しいね! こーゆーお店って味は二の次だったりするけど、ココはちゃんとしてるんだ?」 「"サービス料"が上乗せされてる分やっぱり割高にはなっちゃいますけど、"これなら妥当だ"と思ってもらえるようにしたいんですよ。なので結構、口出ししちゃってて」 「納得。ユウちゃん監修なら間違いないね」 「店長が僕のワガママを許してくれる人で良かったです」 「んー、その店長さんが今後の維持を見据えているなら、ユウちゃんの意見はもっともだろうからね。迷惑どころか、むしろありがたいんじゃないかな」 「……だといいんですけど」 (なんか、意外) 拓さんのどこか経営者目線の意見に少々面食らう。 失礼ながら、ちゃんと考えてるんだ、とか思ってしまったのは、俺の知る拓さんがあの店での軽薄なイメージしかないからだ。 俺の動揺に拓さんは気付く素振りもなく、オムライスをもう一口と添えてあるサラダを咀嚼し、「それにしても」といたずらっぽく口端をつり上げる。
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

145人が本棚に入れています
本棚に追加