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"ま、いいや"程度の話題だったのか。
肩透かしを食らったような気分だが、なんとかやり過ごせた安堵に胸中で息をつきながら、ハートの中に"拓さん"、プレートの手前部分にハートと"ユウ"の文字をデコレーションする。
「そーいえば、さっき来てくれたあのツインテちゃんも可愛いねー。ユウちゃんの後輩?」
「ええ、あいらは後輩で、ウチの人気ナンバーツーですよ」
「はぁ~どうりで!」
手を打った拓さんの前に、完成したプレートを置き直す。
拓さんは「わーそうそうコレコレ! かわいい! あ、写真撮ろ!」と興奮気味に取り出したスマフォでパシャリと撮影してから、「いただきます」と手を合わせる。
スプーンを手にして、オムライスをひとすくい。
「ん、美味しいね! こーゆーお店って味は二の次だったりするけど、ココはちゃんとしてるんだ?」
「"サービス料"が上乗せされてる分やっぱり割高にはなっちゃいますけど、"これなら妥当だ"と思ってもらえるようにしたいんですよ。なので結構、口出ししちゃってて」
「納得。ユウちゃん監修なら間違いないね」
「店長が僕のワガママを許してくれる人で良かったです」
「んー、その店長さんが今後の維持を見据えているなら、ユウちゃんの意見はもっともだろうからね。迷惑どころか、むしろありがたいんじゃないかな」
「……だといいんですけど」
(なんか、意外)
拓さんのどこか経営者目線の意見に少々面食らう。
失礼ながら、ちゃんと考えてるんだ、とか思ってしまったのは、俺の知る拓さんがあの店での軽薄なイメージしかないからだ。
俺の動揺に拓さんは気付く素振りもなく、オムライスをもう一口と添えてあるサラダを咀嚼し、「それにしても」といたずらっぽく口端をつり上げる。
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