カワイイ俺のカワイイ接客

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「"あーゆーサービス"のウケがいいのは、やっぱり何処も一緒だね」 「、」 「そんなに驚かなくても。この界隈にいればそりゃ知識として身につくし、"対象"になれば尚更でしょ?」 「……そうですね。あの時の"取り合い"も、手慣れてましたもん」 「いーや? 一応、"そーゆー嗜好を好む子"の前ではやったりはするけど、ユウちゃんはそーゆーワケじゃなさそうだったからね。ユウちゃんの前では、常に"いつも通り"だよ」 「いつも通り……」 訝しげに眉を寄せた俺に、拓さんは「そ。アレはオレとカイの、いつも通り」と笑顔で繰り返す。 だとしたら、あの時発せられたカイさんの"俺を取られたくない"宣言は、"演技"ではなく"本心"だったと考えていいのだろうか。 (いや、だからそれも、"客"を取られたくないだけだろ) 浮かぶ都合の良い解釈を、そうではないと打ち消す。 (都合の良い? それは、誰に、俺に? どう、"都合"が、いいって) チリンチリン。 「っ、」 耳に届いた出来上がりを告げるベルに、沈み込んだ思考が遮断される。 「っ、スミマセン、料理が出来たみたいなんで、失礼します」 「はいはーい」 笑顔のままヒラリと手を上げた拓さんに会釈して、早足でパントリーへ。 同じくベルの音に反応していた時成には「俺が行くから大丈夫」と目で合図して、受け取った時成は軽く頷きお客様との会話を続ける。 危ない。最近どうもおかしい。 顕著なのは前回のエスコートからだ。 カイさんの言葉が、表情が、いちいち気になる。 (ったく、ミイラ取りがミイラになってどーすんだ) 出来たてのパンケーキプレートをトレーに乗せながら、ギリリと奥歯を噛む。 なんだか最近、思考のコントロールが上手くいかない。 これでは、俺の"モットー"に反する。
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