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「これ、拓さんのオーダーですー」
「? お前行かないのか?」
「先輩のお客様ですからねー。流石にそこまでがめつくないですー」
「というワケでコレ、よろしくお願いしますー」と手渡されるまま受け取って、押し付けられた追加伝票も手にして拓さんの席へと向かう。
横目で確認したコウくんのパンケーキは残りあと少しといった所だ。
チーズケーキを乗せた皿を手に向かう俺に気づいたのだろう。
ジュースを片手に店内を眺めていた拓さんが、俺にニッと笑んでカップを置く。
ここは海外カフェのテラス席か。
「拓さん、チーズケーキです」
「ありがと。やっぱ食後のデザートは外せないよね!」
「特に女性は"別腹"って言いますもんね」
「へ? あ、うん」
キョトンと目を丸くして、それから「そうだね」と珍しく苦笑を浮かべる拓さんに小首を傾げる。
何か妙な事を言っただろうか。
それから気付く。
もしかして拓さんは、"女性"として扱われたくないタイプだったのかもしれない。
「あ、スミマセン。失言でした」
急いで謝罪を口にした俺に、拓さんは「あーイヤイヤ、大丈夫だって」と否定するように手を振って。
「オレはコレでも"女"だって胸張ってるタイプ。だからへーき」
チーズケーキの先端を切り分けて口に運び、「ん、おいし」と頬を緩めた拓さんは、「たださ、」と言葉を続ける。
「店のキャストとか、友達以外でさ。そこまで自然とオレを"女"扱いする人って中々いないから、ちょっとビックリしただけ。カイの事も、"女"って見てる感じかな?」
「カッコ良くエスコートして貰ってばっかりで特に女性扱いしているワケではないですけど、認識としては女性ですね」
「そっかぁ」
「あ、もしかしてカイさんって"そう"思われたくないタイプでしたか」
「ん? いや、ヘーキヘーキ。カワイイ"女の子"だよ、カイは」
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