カワイイ俺のカワイイ接客

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心配ないと微笑まれ、胸を撫で下ろす。 確かに、今まで考えた事もなかったが、"その可能性"もあったワケだ。 考慮不足だったが結果オーライだなと息をつくと、フォークを置いた拓さんが「オレはさ」と呟く。 「"拓"の時も"そうじゃない"時も、殆ど差はないからワリと気楽なんだけど、カイはどっちかって言うと上手く"演じてる"ってタイプでさ。とはいえ"カイ"がまるっと嘘ってワケじゃなくて、自分の"もう一つの人格"として楽しんでるっぽいんだよね」 「もう一つの人格……」 「そ。だからきっと、"カイ"として得た感情は勿論あの子自身の感情なんだけど、それを"そう"受け取るか"カイ"としての感情だと割りきるかは蓋を開けてみないとわかんなくって。オレも結構信頼されてるほうだけど、その辺は未だに判断付きにくいんだんよねー」 淡々と、ただ事実を述べる拓さんの目にはカイさんが浮かんでいるのだろう。 空虚を見つめていた拓さんはスイっと視線だけを動かして、「あそこの彼ぐらいわかり易けりゃ、もうちょっといじり甲斐があったんだけどね」と肩を竦めてみせる。 あそこの彼とは、コウくんの事だ。 「ウチのお客様をナンパしないでくださいよ」と釘をさせば、「わかってるって」と笑う。 「まぁ、どちらにしろ」。言う拓さんが、俺の目を真っ直ぐに捉える。珍しく、真面目な光を湛えて。 「カイは大事な仲間で、カワイイ後輩だ。ユウちゃんで言うと、あいらちゃんみたいな存在かな。悪戯に傷付けるヤツがいたら、たとえカイが許しても、オレは許さない」 「っ」 鋭く突き刺さる眼光に、くっと喉が締まる。 見抜かれた。焦りに心臓が激しく音を立てるが、グッと堪えて拓さんの視線を受け止める。 まだ、だ。まだ結論付けるには早い。 だって拓さんは何一つ、"決定的な"言葉は発していない。
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