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「"牽制"に来る場合、拓さんがカイさんのコトを好きで、近づいてきた先輩を排除するためってのがワンパターン。またはその逆に、拓さんが先輩のコトを気に入ってしまって、その"推し"であるカイさんに妬いたパターンが考えられますー」
「な、るほど?」
「でもユウちゃん先輩を敵意があるって感じでもなかったですし、カイさんも至って大切って雰囲気でしたー。なので、先輩がもう店に来ないようにって"牽制"にきたワケじゃなさそうですー」
「ほーんと先輩って、コト恋愛絡みになるとサッパリですよねー」と呆れたように見る時成に「ウルサイ」と返してアイスティーを呷る。
カイさんと一緒に飲むあの店の紅茶と比べると、香りが鼻につく。
「それとですねー」。愉しそうに、オレンジの氷をカツリと鳴らしながら、時成が片目を細める。
「拓さん、きっとおれと"同類"ですよー」
「同類?」
「バイ、ですねー。アレは男も女もイケるくちですー」
「な、どして……!」
「貴重な"お仲間"には敏感なんですー」
時成は得意気な顔で身を乗り出すと「えいやっ」と俺の鼻先をチョンとつついてくる。
いつもなら即座に振り払う所だが、今の俺はそれどころじゃない。
そうだ。そうじゃないか。
もしかしたらカイさんも、"その"可能性があるじゃないか。
(というかそもそも、"男"に興味あるのかすら)
この界隈では特に、珍しくもなんともない。
大前提として、女性にしか興味が無いんじゃないだろうか。
だからこそ、"完璧"を演じて、多くの女性にもてはやされる"カイ"を"楽しんで"いる。
「先輩?」
氷がたっぷり入った冷水を頭から被ったような衝撃。
誰よりも、分かっていたつもりだったのに。
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