第1章

10/11
前へ
/11ページ
次へ
「1962番出なさい」 逮捕されてからちょうど7年目のある日、私は独居房から連れ出された。 「あぁ私、殺されちゃうんだ」 そう思いながら廊下を歩いていると、小部屋に通された。そこにいたのは当時の法務大臣であった。 そこで私はある選択を迫られた。 1つはこのまま死刑になるという選択肢。 もう1つは、日米が秘密裏に行っているコールドスリープの被験体となる選択肢。大好きであった彼がそのコールドスリープの実験に携わっていることを知った私はすぐに、被験体に道を選んだ。 1度被験体になったら死ぬまでコールドスリープの装置から出られないこと、万が一脱走しないように手錠をかけらること、そして検査のため5年に1度目覚めさせられることだけを説明され、私は棺桶のような装置の中に入った。 「アハ、ハハ、……アハハ」 涙と笑いが同時に出てくる。 「こ、今回で何回目なの。私が目を覚ますのは」 「10回目です」 ということは私がこの装置に入ったのが2025年だから今年は2075年か。 「記憶がこれ程まで失われていたのは今回が初めてのようです。途切れ途切れとはいえ50年も殆ど変わらない姿のままコールドスリープを続けていれば、記憶のほうに障害が出てくるのは当たり前かもしれません」そうか私、50年間肉体的には年とってないのか。凄いな。私はふと浮かんだ疑問を投げかけてみる。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加