記憶喪失の9割はショック療法で治る

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 あれこれ考えをめぐらせていると、ぽんぽんとぼくの腰かけているベッドを絵美里が叩く。 「なにをするつもりだ?」 「まあまあいいからいいから。心配無用だって。あたしの言うとおりにしてれば、全部バッチグーだよ、お兄ちゃん。記憶をとり戻したいんでしょ?」  強い調子で言われたせいか、不思議と断れない。ぼくはヘタレなんだろうか。条件反射のように動く体。大の字で寝そべると、見知らぬ天井が視界に広がった。 「ん、しょっ、と」  ギィ、ギィ、とベッドが軋んで揺れ動く。なにごとかと首だけ動かし、音のした方角を見た。  ぼくの開いた両足のあいだで、なんと絵美里がアヒル座りをしているではないか。 「な、なな、な、なにしてんだよ!」  泡を食って、まわらない舌でぼくは叫んだ。 「はっはーん。お兄ちゃんったら、ひょっとしてエッチなこと考えてるー?」  開いた片手で口もとを隠し、丸い瞳をすーっと細くさせ、絵美里がニヤつく。 「や、考えてない考えてない!」  いや、九分九厘ぐらい考えていたけど考えてない。
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