記憶喪失の9割はショック療法で治る

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 力尽きたぼくを見おろし、絵美里が目に涙を浮かべて笑う。反撃する気力も起きず、ぼくは無言でにらむしかなった。 「ごめんごめん。そんな怒んないでよー、お兄ちゃん」  ぜんぜん誠意のない謝罪である。手をあわせてはいるが、目は笑いっぱなしだ。 「あんなショック療法があるか!」 「だって、電気ショック療法の装置がなかったんだもん」 「ぼくを殺す気か!」  怒りのあまり自然と体が起きあがる。 「まあまあ。次のショック療法試してみようよ。ね?」 「ったく、しょうがないな」  小首をかしげて上目遣いでお願いされると、あまり語気を荒げる気にならない。やはりヘタレなのか? ぼくは。ああ、情けないことこのうえない。  ただ、こいつもこいつなりに一生懸命なのかもな。やりかたは無茶苦茶だけど。  そこで、ふとあることに気づいた。 「ところで、ぼくはどうして記憶喪失になったんだ?」  ぼくとしたことが、うっかり肝心な部分を聞き忘れていた。原因がわかれば、案外ぼくの記憶はあっさり戻るんじゃないか。
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