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と、絵美里の表情に一瞬焦りが垣間見えた。
「あ、ああー。それね。お兄ちゃんったら、なんにもないところでつまずいて、そこの机の角で頭を打っちゃったんだよ。まったくドジなんだからー」
「すごくとってつけたような理由だな。おい」
訝しがるぼくにぎこちない笑みを浮かべ、どうせ記憶が戻ったらわかるじゃん、と絵美里はお茶を濁した。
怪しい。疑ってくれ、と言わんばかりに怪しすぎる。
しかし問い詰めたところで、ゲロするとも思えない。こいつは軽口を叩く割りに不都合なことは決してしゃべらないのだ。
……って、どうして知ってるんだ? もしかして記憶が少し戻ったのか。
「どしたの? ぼけっとしちゃって」
「なんでもない。で? 次はなにをする気だ」
ショック療法とやらは、多少の効果はあるらしい。ぼくはやや前向きな気分で絵美里を促してやった。
「そだねー。じゃ、少し刺激的なやつをしよっかなー」
「電気あんま系は勘弁な」
「わかってるって。じゃあ、お兄ちゃんはそこに座ってて」
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