記憶喪失の9割はショック療法で治る

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 絵美里がひざ立ちで歩き、ぼくから距離をとる。といっても、一メートルも離れていないが。  やおら立ちあがる絵美里。おもむろに両手を下半身に伸ばしていき、身につけているスカートの裾をつまむ。刹那、イタズラっぽく唇を緩めた。 「ジャンッ!」  手品を披露するみたいにたくしあげられるスカート。水色と白色で彩られた縞パンツが、ぼくの視線を釘づけにした。 「ほらほら。妹が兄のいる前で、パンツを見せびらかす。けっこうショックじゃない? それともクラッときちゃった?」  瞳を嬉々として輝かせ、絵美里はスカートをバタつかせる。なんとも言えない気持ちがぼくを襲う。どうも頭は忘れても体は覚えているらしい。 「いや、なんか残念な気分だ。ぜんぜんエロくないし」  絵美里はスカートから手を放し、眉をつりあげた。 「なによ!! せっかくサービスしてあげたのに!! お兄ちゃんのバカー!!!!」  怒号と同時に、絵美里は勢いよく飛びあがった。ぼくとの距離が一気に縮まる。絵美里のひざ小僧が目と鼻の先まで迫った。
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