23人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
そう、突っ込みをいれたかったのだが、
「それとね、良い絵だねって二人とも誉めてくれたのよ。お世辞でも嬉しかったわ」
と言った霖があまりにも嬉しそうで、言えなかった。
「良かったわね」
「うん。お母さんも忙しいのに、見に来てくれてありがとうね」
「……私も見に行ったぞ」
ボソッといつの間にか帰ってきた、主人が言った。
「あ、お帰りなさい。お父さんもありがとうね」
「…ああ…」
「何を照れてるんだか」
と私が主人に突っ込みを入れたら、霖はふふふと笑った。
それから、またしばらくしたある日、会社にいると内線が入った。
『三枝課長、今受付にお嬢さんがいらしてますので、下にお越しください。お願い出来ますか?』
『分かりました。今行きます、ありがとう』
席を外すことを回りに伝え、財布とスマホ、メイク道具の入っただけのトートバックを持って、エレベーターホールに向かうと、ちょうどエレベーターから降りてきた社員の会話が聞こえてた。
「さっきの子、誰を待っているんだろう?可愛かったよな」
「ああ、高校生くらいかな?」
それを聞いて急がなきゃと思う。
霖はここに来るのは初めてだ。
きっと待っている間、不安に違いない。
エレベーターから、降りると足早に霖の所に向かうと、受付前に霖が立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!