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霖はさんざん悩んで、ケーキセットを、私はサンドイッチとコーヒーを頼んだ。
「ケーキセットだけで足りる?」
私がそう言うと、うんと答えた。
「お母さんと違って、お昼いっぱい食べたから、大丈夫」
「そう?ならいいけど」
「…お母さん、さっきの人も会社の人だったのね」
霖が躊躇いがちに言った。
「ん?ああ、梓くんのこと?」
「うん…」
「梓くんがどうかしたの、霖」
そう聞くと、
「この間、美術館で面白いことばっかり言う人がいたって言ったでしょ?…あの人だったの。で、もう一人は石黒さん」
と小さい声で言った。
「この間のおサボりさんはあの二人だったか…」
「後で、二人を怒らないよね?」
思わず、笑ってしまった。
霖は笑ったことを不思議そうな顔をしている。
「前の事について怒るつもりはないわよ。それにあの二人、いつも仕事はきちんとやってくれてるし。何?それを心配してたわけ?」
霖は真顔で頷いた。
「だって、お母さんあの二人の上司なんでしょ?」
「私の部下は石黒くんだけよ。梓くんは他の部署の子。あなたが心配しなくても大丈夫」
そう言うと、やっと霖が安心したように笑う。
「良かった…」
「なにそれ、私に失礼よ。そうそう怒らないし」
そのあとは二人で、楽しく食事を済ませた。
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