第1章

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「あなたは……誰ですか……」  意識が朦朧の中、何回も声をかけてくれている人物に問いかける。  周りは薄暗くはっきりしないため顔をしっかりは見れないが、どこかに連絡をしているようだ。  そのまま目の前が暗くなった。  目が覚めると病院のベットの上にいた。  看護師が私に気づき、驚いた表情をした後、状態を聞いてくる。わけもわからず答えていたが、ある質問で言葉が詰まった。  ”あなたの名前と住所はどこですか?”  それを答えれず汗が流れてくる。詰まっているうちに医者が来てまた色々な質問をされる。そして同じ質問で詰まった。そんな私の様子を見て様々な検査をしてくれた。 「んー、とりあえず何も異常はないようだ。とりあえず2,3日様子を見て記憶が戻るか待ってみよう。」  医者がいなくなった後、外を見てみる。外の風景は見たことがあるような気はするが全く思い出せない。そしてガラスに映る自分を見ても自分のことを思い出すことが出来ない。 「わたしはだれなんだ……?」 「やっ、ほー。目?覚めたか?い。」  振り返ると女の子がいた。 「いやー新聞を配達しているときに道路で倒れているんだもん、びっくりしたわー。」  元気な声で話しかけてくる。朦朧としているときに聞こえた声と一緒だった。 「すいません。ご迷惑をおかけしたようで……」 「んっ?いいよいいよ危なかったんだから!それよりも家に連絡した?家族や学校が心配しているんじゃない?」 「それが……」  私は女の子に記憶がないことを話した。一応名前と学校は服に名札がついていたので知ることが出来たが自分のものではない気がする。 「そう、それは大変なんだね……」  女の子は黙って何かを考えている。 「じゃあさ、記憶が戻らなかったらウチに来ない?うち今人手が足りなくてさーどう?」 「思い出せなかったらお願いするよ……誰も知らないから……」 「じゃあ決まり!あっ!まだ名乗ってなかったね私は明(あきら)!よろしくね!実(みのる)。」  数日後、記憶は結局戻らず、一応捜索願などで探してもらったが何も成果はなく、学校にも問い合わせたが数年分照合してみても出てこなかったらしい。  と、いうことで明の家でお世話になることになった。  明の家族は温かく受け入れてくれた(人手不足だったからもしれないが)。
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