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【1】
仕事は何時もと変わらない。
エレベーター内に閉じ込められた11名の人質を救出するべく、角柱状の空間で本体を繋ぎとめているワイヤーを警察と民間人二名が下っている。
ワイヤーのどこかに爆弾が仕掛けられているのだ。
残り制限時間の五分を切ると爆発でワイヤーが千切れ遊園地の急降下するエレベーターのアトラクションに変貌し、乗っていた11名が犠牲になるという仕掛け――
「かずさん、爆弾はまだ?」
白石かず美はペンライトを手に爆弾を探す石黒かず子に訊ねた。普段は黒のジャケットを着ているが、捜査の機動力を選び薄手のシャツを着て捜査に臨んでいる。
「もう少し待ってくれる?」
かず子は両脚をワイヤーに絡め逆さまの状態で、爆弾を探す。肉体労働は慣れっこだ。例え火の中水の中森の中草の中エレベーターの中でも――
「あった」かず子はライトに照らされた正方形の容器目指してシャーッと降りると、その仕組みを確認する。
「コードが沢山ある」
絡まったスパゲッティを思わせる極彩色のコードを前に、かず子はどれを切れば良いのか戸惑った。
「どんな色があるの?」
「赤、青、黄、緑、橙、桃色」
こういう場合の対処法はかず美は知っていた。一つに好きな色。二つに本日のラッキーカラー。三つに…勘と三通りしかない。
「ピンクよ」かず美は答えた。
「それはかず美カスタムの車の色じゃない」
「私はピンクが好きだよ」鈴木るかが続いた。ピンクにニ票。
「他は?」
「僕は青が良いな」荒木が続く。刑事ではないが同行取材の家庭で巻き込まれたのだ。
「みみみみみ…」
ワイヤーの遥か上から本市がみみ色と答えた。緑と答えたかったのだが、本市は高所恐怖症故にコアラのようにワイヤーにしがみつき下に降りれない。
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