第1章 帰らない恋人

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一人で寝ることに、慣れてきた今日この頃。 目覚めのジャズが、コンポから流れてくると、あたしはゆっくりと目が覚めた。 目が醒めると、いつも目の前にあった傷だらけの背中を、しばらく見ていない。 キャメルの匂いも、いつの間にか消えてしまったこの部屋。 不機嫌そうにモーニングコーヒーを飲むあの姿を、もうかれこれ、1年、見ていない。 キャミソール一枚に短パンで寝ていたあたしは、ベッドから足を下ろした。 腰のあたりまで伸びた髪を揺らして、あたしはバスルームに入った。
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