第1章 帰らない恋人

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ここは、通り雨と呼ばれるシャワーは日常茶飯事。 蒸し暑いけど、気持ちのいい汗をかく。 ロスアンゼルスとよく似ているけど、ロスよりもっと、自由な島。 数年前、 あたしと彼は、日本から出て、ここ、ハワイにやってきた。 ハワイに来るまでのあたしたちは、親子みたいな関係で、仕事の上司と部下で、長い時を経てようやく恋人同士になった、という関係だった。 そして、仕事柄、命の危険が常に隣り合わせだった。 あたしは、瑠生。ルーと読む。 アメリカ人の父親と日本人の母親を両親に持つ、現在27歳。 彼は、匠。タクミ。40代半ば。 父親はコロンビア人、母親は日本人。コロンビアの内戦に巻き込まれて両親を失い、幼いうちから戦争の前線に出て戦っていたという。だから、全身傷だらけ。 そして、銃を隠し持っている。 探偵の仕事は、大体は浮気調査、身辺調査、企業調査、人探し…が基本的に多いけれど、時々あたしに内緒でニューヨークの知り合いのCIA関連の危険な仕事が舞い込んでくる。 あたしたちは親子みたいだけど、れっきとした夫婦でもある。お互いに命をかけて、守りたい人。それが、あたしと匠の関係だ。
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