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ジャクヤは涼しい顔でいった。
「じたばたせずに全員冷静に殺されることや。ぼくは電撃嫌いなんやけどな」
すねたように黒い火山灰質の土を見ている。この少年はどんな子ども時代を過ごしてきたのだろうか。この戦闘訓練が終わったら、いつか腹を割って話してみたかった。
「ところで、ジャクヤは呪術(じゅじゅつ)をよくする天童家でも、100年にひとりの才能をいわれているんだよね。その力、つぎの戦闘でつかえないか」
じっと銀の目で見つめてくる。吸いこまれそうな不思議な深さのある目だった。泡立つ滝壺か、そこの知れない深さの湖でも覗(のぞ)いたようだ。
「ああ、やってみよう。タツオにもぼくの力を理解してもらう必要があるから。ちょっと敵の視察にいってくるわ」
そういうとふらりとジャクヤは休憩中の120人の敵部隊に向かって歩いていってしまった。なにをするのかまったくの未知数だ。だがジョージとは別な意味で、あの少年を味方にしておけば、予想外の威力を発揮するだろう。タツオの指揮官としての直観がそう告げていた。
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