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タツオは練兵場の向こう側の端で休憩中の120人の進駐軍兵士たちを見つめた。各自装備の確認をおこなっている。タツオは実戦経験が豊富なソウヤに質問した。
「佐竹さん、うちが勝てる確率は?」
「上空からの支援か『須佐乃男』がなければゼロだ」
萬(よろず)家の姉・満千留(みちる)が悲鳴のようにいう。
「確率ゼロじゃ、こんなの訓練にもならないじゃないの。わたしたちに死ぬ練習でもさせるつもりなのかしら」
天童(てんどう)家の分家・寂矢(じゃくや)が苦笑していった。
「圧倒的に不利な状態でいかに戦うかの訓練なんじゃないんか。逆島少尉、本土防衛戦の氾(はん)=エウロペ連合軍の数は覚えとるな」
ジョージと見た三重特秘の文書を思いだす。上陸軍の総数は120万人。それに対するのは『須佐乃男』を操縦する7名だ。タツオは改めて影の濃いジャクヤを見つめた。意外にも絶望に落ちそうな心を、この少年が救ってくれた。
「ああ、わかった。みんな、聞いてくれ」
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