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階段を上ると、半そでのシャツにじわりと汗が滲む。五月も半ばになると、もう初夏を越えて堂々とした夏日だ。 改札を抜けて駅前の大通りを歩く。十年ぶりなので道は覚えてない。スマートフォンが頼りだった。 インターネットのサイトに乗っている道順通りに歩くと、白い建物が見えてくる。発券場だ。 大人の往復切符を一枚買った。 ここから先は船に乗る。一時間に一本しかないので、彼らは一本前に乗ったのだろう。 これから行く島は、猿島という無人島だった。無人島といっても人の手が入っているレジャーランドである。 バーベキューをしたり、釣りをしたり、夏なら海水浴も楽しめる。十年前にきたときは夏休みで、海で泳いだ記憶がある。 駅からだらだらと歩いてきたので、待ち時間もなくすぐに出航となった。十一時半、三笠発、猿島行きだ。 船に乗っている時間は十分ほど。みな楽しそうなグループばかりで、一人ぼっちなのは太一だけだった。
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