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黄色いポロシャツに、無理やり感のある細身のダメージジーンズ。
精一杯、若作りをしているのだろうが、全身から中年のオヤジくささがにじみ出ている。
そもそも、彼は五十手前の立派な中年オヤジである。
かつての太一の父親。だが今は再婚をして新しい嫁と子供もいる人だ。
「よく来てくれた」
船が到着したので様子を見にきたのだろう。右手には赤系のストライブのシャツを着た小さな男の子の手を引いている。
子供は目が大きく、きょとんとした顔で太一を見上げていた。
無骨な親父とは似ても似つかない可愛らしい顔立ちだ。母親似なのだろう。確か、三歳とか四歳とか、それぐらいだ。
「陽介(ようすけ)、お兄ちゃんだ」
「おにいちゃん?」
きょとんとした顔のまま、今度は父親の顔を見上げる。
「そうだ。ずっと会いたがってた、陽介のお兄ちゃんだ」
「おにいちゃん!」
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